朝日新聞全国版「朝日歌壇」入選歌

短歌

朝いつもいっしょのバスを待ちながら言葉交えず寂しき人ら                                〔昭50年1月第四回 五島美代子選〕

自らの巣に死すほかなき蜘蛛にして()を待つままに風に吹かるる
                        〔平24・12・3 馬場あき子選〕

復職の朝はスーツで出勤す小雨にけむるけふから弥生
                   〔平25・4・1  馬場あき子・佐佐木幸綱選〕
   選者評「第二首は復職の朝の明るい緊張が弥生の雨とスーツ姿にある」

八十歳の父がいつまで担い手か三百万かけ田植え機替えしが 
                          〔平25・7・8  馬場あき子選〕

部屋ごとのドア照らされて静まれり老人ホームに秋の夜更けゆく
                         〔平25・12・8 馬場あき子選〕
   選者評「第三首の寂寥感は心に迫る」

秋風がさやかに吹くやふるさとにフグの初競りみかんの初荷
                         〔平26・10・20  馬場あき子選〕

「お父さんは謝るのが下手なんだから」とまた言われそうだがメールを送る
                          〔平26・11・3 永田和宏選〕

終はりなき円周率を寿ぎて三・一四結婚せしとふ
                           〔令3・4・18 高野公彦選〕

朝早く田んぼにいるのは白鷺と雉子と()()(さぎ)吾とカルガモ
                           〔令4・8・14  佐佐木幸綱選〕
   選者評「第三首、広々とした早朝の田が()に浮かぶ」

()()(さぎ)がじっと見ており白鷺がくわえた小鳥を飲み込めぬのを
                           〔令5・7・2  馬場あき子選〕
   選者評「第二首の五位鷺が面白い。落とすのを狙っているのか」 

七、八年ぶりに出でたり蝦蟇がまがえるわが家の一員戻れるごとくに
                       〔令5・8・27  佐佐木幸綱選〕
   選者評「第三首、楽しそうでかつ嬉しそうな下句に注目する」

春耕に出でし野ねずみ白鷺が丸呑みにせりまたたくうちに
                          〔令6・5・26  馬場あき子選〕

刈り取りの最後の稲穂の茂みから雉の子野ねずみ追われ出で来る
                          〔令6・10・6  馬場あき子選〕                               

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