(60)天変地妖と宣伝使―私の泥海時代―

「愛善世界」誌掲載文等

○湖水となる低地

 昨年七月一日の朝、吾が集落の約二十ヘクタールの水田地帯が一面湖になっていた。増水した川の逆流によるものである。深さが三メートルにも達し、水田地帯の端にある住宅も何軒か孤立した。前日からの降雨量が二百ミリを超えていた。

 なお、この時私が業者に連絡して早めに水門を開けてもらったため、心配された水稲への被害を受けずにすんだ。

湖になった水田地帯 (5.7.1)
現在の水田地帯 (6.7.14)

 小さい頃からこの光景を私は見て来たが、連想することがある。霊界物語十五(二一章「帰顕」)にある、今から三千年後の五十世紀の記述である。

「大地の傾斜旧に復してより、今は御覧の如く低地は残らず湖水となり、唯高山の頂きのみ頭を現はし」 (十五巻二一章「帰顕」)

 現在、地球の地軸は二十三・四度、太陽の公転面に対して傾いている。五十世紀になればその傾きがなくなり、低地が湖水になるというのである。

 ところで、「大地の傾斜旧に復して」とあるように、元々地軸は傾いておらず、原因があって、現在のように地軸が傾いたのである。

まず、

現代の賢しき人間は、天災地妖と人事とには、少しも関係無しと云ふもの多けれど」

との前置きがあり、

「地上神人の精神の悪化は、地上一面に妖邪の気を発生し、宇宙を溷濁(ごんだく)せしめ、天地の霊気を腐穢(ふゑ)し、かつ空気を変乱せしめたるより、自然に天変地妖を発生するに至る」(第六巻第一五章「大洪水(一)」以下も同)

 人心の悪化が、大洪水と大地震らの天変地妖を生み、大地が泥海となっている。

「雨は(しき)りに降りきたり、前後を通じて五百六十七日の、大洪水と大地震、彗星処々に出没し、(じつ)(げつ)光を押し隠し、()(そら)は暗く大地の上は、(たいら)一面の泥の海、凄まじかりける次第なり」

 もとより、人間は天地経綸の主宰者たる天職がある。

人間は万物普遍の元霊たる神に代つて、天地経綸の主宰者たる可き天職を、惟神に賦与されて居る」

 天変地妖は、その天職を人が忘れた結果だと断じてある。

天変地妖の襲来したのも、全く地上の人類が、鬼や大蛇(をろち)(きん)()の邪霊に憑依されて、神人たるの天職を忘れ、体主霊従の行動を敢てし、天地の神恩を忘却したる自然的の結果

 今日(こんにち)の大雨や地震についても、戦争は言うに及ばず、政治をはじめ各分野で見られる現代人の心の悪化と無関係であるはずがない。

 天変地妖はさらに続き、地軸が傾く。かつて天上にあった北極星と北斗七星を、我々が今、東北の空に見るに至っている。

「この大変乱に天柱砕け、地軸裂け、宇宙大地の位置は、激動の為やや西南に傾斜し、(したが)つて天上の星の位置も変更するの已むを得ざるに致りける…北極星および北斗星は…この変動に依りて(やや)我が国より見て、東北に偏位するに致りける」(六巻一八章「天の瓊矛」次も同)

北極星と北斗七星

○大神の犠牲と宣伝使

 大地が泥の海となり、「地上総ての蒼生は、(ほとん)ど全滅せしと思ひきや、野立彦、野立姫二神の犠牲的仁慈の徳によりて」「残らず救はれ」ている。      

 こうした救いのなかで、言霊別命が救世主となる。言霊別命は、蛭子であり出口聖師である。

淡嶋(あはしま)の国魂として、言霊別命の再来なる(すく)()(ひこの)(みこと)は…蛭子(ひるこ)の神となりて…幽界の救済に奉仕され…後世猶太(ゆだや)の国に救世主となり…十字架の惨苦を()め、万民の贖罪主(あがなひぬし)となり」(六巻二二章「神業無辺」)

「吾こそは言霊清き蛭子なり国のあちこち(うた)(ぶみ)建つるも」    (昭和十年八月映画「七福神」)

蛭子と歌碑
(東北別院歌碑)

 また併せて、こうした「災害をなし、収拾(しうしう)すべからざる」「世界の大峠」を「免るることを(あまね)く地上の神人に告げ諭」し、「大難を免れしめ」「神人の御魂の救済」のため、「人心を 善導すべく」「(あなな)

(ひの)(をしへ)」の宣伝使が天下に派遣された。(六巻「総説」要約)

 つまり、天変地妖の原因たる人心の悪化を善導すべく、宣伝使が必要になったということである。

○宣伝使の役割

 さて、霊界物語が一区切りとなる七十二巻に宣伝使ヨリコ姫が登場する。ヨリコ姫は元は山賊の頭目であったが、梅公、つまり言霊別命により改心し宣伝使となる。

「天下を掌握せむと…羅刹(らせつ)悪鬼の権化ともたとふべき山賊の大頭目」たるヨリコ姫女帝」(六十七巻一章「梅の梅花」次も同)

「梅公が口より(ほとばし)る天性の神気に打たれて…惟神の本性、生れ赤児の真心に立ちかへり…神に従ひ神を愛し」

 宣伝使となったヨリコ姫の宣伝歌はわかりやすい。神観や人生観、特に宣伝使の役割をわかりやすく説いている。

(神観)

「そもそも此世は天地の 元津祖なる生神

ただ一柱坐し在して 日月火水木金土

 森羅万象創造し」

(人生の目的)

「かつ人間を神様と 同じ形に造りまし

 厳と瑞との精霊を 各自に宿しまし

 天と地との経綸に  仕へしめむとなし給ふ

 人の体はかくのごと 実にも尊きものですよ

(誤った人生観)

 それをも知らず人間は この世に生れ来た上は

 飲めよ歌へよ寝よ起きよ お金があれば酒飲んで

 歌舞音曲に戯れる これより外に人生の

 目的更にないものと 誤解してゐる哀れさよ

 これで人生の本分が 尽しをへたといふならば

 人は獣類(けもの)と同じこと (よろづ)の物の霊長と

 どうして名附けられませうか 

 人は神の子神の宮  尊き神の宿として

 造らせ玉ひしものなれば 衣食住居その外に

 尊き(つとめ)がなけれやならぬ」

(宣伝使の役割)

 そのまた尊き神業は 如何(いかん)と言はば人間は  

 天地の神の御ために 有らむ限りの赤心(まごころ)

 尽し(まつ)りて道のため 天国浄土の円満を

 はからむために霊魂(れいこん)の (たま)をば研き開かせつ

 この世に住める同胞(どうほう) 八衢(やちまた)地獄の境遇より

 救ひ出だして天国の 常磐堅磐(ときはかきは)の花園に

 導き渡す宣伝使 御伴(みとも)に仕へ奉りつつ

 その神業の一端に 仕へ(まつ)るぞ人として

 最大一の(つと)なり」 (七十二巻八章「街宣」)

 現在、信徒の多くが宣伝使に任命されている。ヨリコ姫が言うように「同胞(どうほう)八衢(やちまた)地獄の境遇より救ひ出だして、天国の常磐堅磐(ときはかきは)の花園に導き渡す」役目を、十分に果たしてまいりたいものである。

○私の泥海時代

 十五年前の平成二十一年七月二十一日、山口県では一時間雨量八十ミリ、二十四時間雨量二百七十五ミリの観測史上一位による豪雨災害があった。土石流も発生し二十二名が亡くなられた。

平21.7.21 山口県豪雨災害

 私は当時五十一歳、知事の記者会見担当であった。災害対策本部が設置された十日間、まともに眠らせてもらえない中、副知事から執拗な叱責を受けた。知事の記者会見担当でありながら、会見場に入れてもらえないというひどいこともされた。おかげで三年半に及ぶうつ病に陥った。当時においてもパワハラであるが。

 落ち度の覚えなく叱責を受けうつ病になった理不尽さが、三年半ずっと消えなかった。私は、三毒(二巻五○章「鋼鉄の鉾」(どん)(しん)())のうちの瞋恚(しんい)(恨み)の毒に浸ったのである。

 ところが不思議なことに、病いが癒えて副知事(この時は美術館長)に会った途端に、恨みがぱっと消えた。瞋恚の毒から救われたのである。

 うつ病となった私は、本庁から出先への異動を申し出たが、驚いたことに、会った時、私の出先への異動を副知事は不審に思っていた。心配してくれていたのである。しかし「あなたのせいで私は病気になった」と言ったのに対し、「そうかあ」とだけで悪かったとは言わなかった。その後手紙ももらった。四年前には、唐突に私の携帯に副知事から電話があり、最近も電話やメールのやりとりをしている。

 災害対応当時、副知事はパニック状態で、顔元が全く変わっていた。それまで、床屋で隣り合った副知事から「藤井くん、髪をもっと短くしてはどうか」と言われ、髪の薄い副知事に「では、私の髪を分けて上げましょう」と言える仲であった。災害対応でのいらだちを、ものを言いやすかった 私にぶつけていたのだろうと最近思えるようになった。

 現在、私は副知事を恩人だと思っている。副知事が与えた試練のおかげで信仰に熱が入り、教えを本気で学ぼうと思うようになった。

『愛善世界』誌への投稿をはじめ、YouTubeチャンネル藤井盛での霊界物語の拝読録音の配信やホームページ霊界物語勉強室により、世の中に広く教えを伝える宣伝使の役目を果たせるようになった。自分自身が、泥海のような状態に陥ったからこそである。

YouTubeチャンネル藤井盛
登録383人
ホームページ霊界物語勉強室
https://reikaimonogatari.jp

 なお、私の泥海時代に関して、霊界物語で二箇所が思い浮かぶ。一つは八十一巻後半のアヅミ王の娘チンリウ姫が被る過酷な試練の話。乳母の裏切りが結果的にチンリウ姫を救う。

「吾霊魂(みたま)身体(からたま)共に汚さるゝ真際を救ひし彼なりにけり」 (八十一巻一六章「亀神の救ひ」次も同)

「かく(おも)へばアララギとても憎まれじ(わが)(みさを)をば守りたる彼」

もう一つは六巻。善悪混じて宇宙が完成し、自分を苦しめる者が必ずしも悪人ではないとある。

陰陽善悪相混じ、美醜明暗相交はりて、宇宙の一切は完成するものなり」(六巻二〇章「善悪不測」次も同)

「吾を愛するもの必ずしも善人に非ず、吾を苦しむるもの必ずしも悪人ならずとせば、(ただ)(ただ)()(じん)は、善悪愛憎の外に超然として、惟神の道を遵奉するより外無しと知るべし」

○「暴れる気候」と宣伝使

 先週七月十七日の朝日新聞に「湖が語る『暴れる気候』」と題した記事があった。福井県にある水月湖には、毎年一枚ずつ薄く堆積(たいせき)する(しま)模様の泥が四十五メートル以上の厚さで存在し、七万年以上の気候の変化が、一年ごとにわかるという。

水月湖(福井県)

 例えば平成二十五年の台風十八号の跡や一五八六年の天正の大地震の痕跡などがあり、また、一万一千年前、気候がそれまでの寒冷な氷期から温暖で安定した時代になった時と農耕文明の発生が一致しているという。

 しかし、それ以前は、気温変化の上昇と下降を頻繁に繰り返す「暴れる気候」。過去百万年の地球は暴れる不安定な氷期が普通で、十万年に一回程度、温暖で安定した時代が数千年続く。現在はその安定した時代がすでに一万一千年以上続き、本来ならその安定した状況が終わっていてもおかしくないという。

 また、十五巻でも五十世紀は、地上が炎熱の世界になっている。

地上の世界は炎熱(はなはだ)しく(あい)成りたれば、今は罪軽き神人は残らず、日の御国に移住をすることになつてゐます」 (十五巻二一章「帰顕」)

 しかし、こうした中でも宣伝使は活躍している。

(しか)(なが)ら…三五教の教を信じ不言実行に勉め、労苦を楽しみとしてゐる人間の系統に限つて、()れと反対に六尺以上の体躯(たいく)を保ち、現幽神界に於て、神の生宮として活動してゐるミロク人種もありますよ」(十五巻二○章「五十世紀」)

(令6・7・24記)

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