王羲之の代表作「蘭亭序」にちなんだ書道展の紹介紙面(朝日新聞 令5・3・24)に、「名誉顧問 杭迫柏樹」氏の名前があった。氏は著名な書家であるとともに、大本を弾圧した京都府特高課長杭迫軍二氏の子でもある。
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出口聖師が、第二次弾圧事件について小山弁護士に語っておられる。信者が霊界物語を読まず、教えを理解しようとしないから、神様が警察の手を借りて事件を起こしたのだという。そうすると、杭迫軍二氏は神様に使われたことになる。
「霊界物語を拝読せよといっても読まないから、神様が警察の手をかりてお取り上げになった。人は手もとになくなると恋しがって、血まなこになって読みだす。読んで初めて教えの尊さがわかる…事件が起こらなかったら誰も教えの真価を理解しない。勉強するよう神様から仕向けられた」〔十和田龍著『第三次大本事件の真相』二六六頁 要約〕
同じ観点で言えば、第三次事件も、教えを理解させるために神様が起こされたということになる。神様から霊界物語を取り上げられないよう、私たちは血まなこになって霊界物語を拝読しなければならない。
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三月二十八日の勉強会は、五十四巻一二章から一五章まで。一二章の「妖瞑酒」。苛性的(皮膚等をただれさす激しい作用)な狂乱を起こす薬が入っている。味がよく、一口呑めば三十年命が延びるが、二口呑めば三十年寿命が縮まる。飲まなくてもその猛烈な匂いだけで感染し、三千人の兵は赤裸となり暴狂うが、やがて酔いは醒めた。いったい「妖瞑酒」は何を意味するのか。コロナ感染も三年を経て収束しつつあるが。
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一五章「愚恋」。心中した伯爵夫人とお抱え運転手が中有界の関所に現れる。大正六年の情死事件がモデル。杉本苑子の小説『伯爵夫人の肖像』にもなっている。◆運転手六助が言う。「男女の関係は権門や門閥や財産や地位や古き道徳に仍つて、左右し得べきものでない」。■赤の守衛が非難。「社会道徳の攪乱者奴」。
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◆伯爵夫人鎌子も訴える。「男本位の圧制的社会」「女に対しては…不公平至極な社会制度」「道徳でも法律でも、男女平等に行はなければならない」■赤の守衛がたしなめる。「社会の秩序が紊れる」「男尊女卑の法則を守らねば」「家庭を作る上は、夫唱婦従の法則に従ひ」「雇人と姦通をしておき乍ら…新社会の光明となるとは怪しからぬ言ひ解け」。◆鎌子はなお反論。「圧迫結婚、財産結婚、門閥結婚、本人以外の者の定めた結婚には、真に夫婦としての互いに貞操を保持する事が出来ぬ」「愛のない結婚を強る」「此責任を社会が負はねばならない」。
鎌子の主張は、出口聖師が体現された身分制度を超えた結婚制度(レポート24・25)につながるようにも見えるが。
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「登場人物に言わせて、読者に投げかけている」「こうしたやり取りを出口聖師は決してお嫌いではない」との参加者の感想。私は、五年前に逝った妻が、ただただ恋しい。
(令5・3・30記)
〔『愛善世界』令和5年5月号掲載〕
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